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子供の頃から見たかったもの

30 Aug 2011

子供ながらにTVの画面を通して、




「 生きるってすごいことなんだな・・・。」




そう漠然と思っていた。


カメの産卵を見て、そう感じていた。



「 いつか見てみたいな。」


幼い私は、そう願っていた。




そんな幼い頃の夢を叶えにパナマの小さな島に向かった。


IMG_8844SACHIPA.JPG




パナマの首都・パナマシティから夜行バスで10時間掛けて向かったのは


ボカス・デル・トーロという島に向かう船が発着している小さな街。


朝もまだ明けきらぬ内に着き、バスから降りると、


「 Bocas del toro! Bocas del toro!! 」


と、TAXIの客引きの威勢のいい声に寝ぼけまなこだった私もすっかり起こされました。


「 あぁ、いけない!酔い止め飲まないと!」


船の揺れに極端に弱い私は、ポーチからペルーで買った酔い止めを出すと


神様お願い!気持ち悪くしないでね!!とお願いをしてゴクリと飲みました。


そのお願いが効いたのか・・・というか、船自体まったく揺れず滑るように船は進むと


30分でボカス・デル・トーロに着きました。


船着き場から海をのぞくと、コバルトブルーの透き通った海に


魚が気持ち良さそうに泳いでいます。


それだけでテンションは急上昇!


「 シュノーケリングもしたいしー、写真も撮りたいしー!


  うーん、何からしたらいいか分からなーい!! 」


と、贅沢な悩みを楽しみながら、昼間は近くの島に行くシュノーケリングツアーに


参加しました。


いつもゆるりと旅している私たちも


アメリカに行くフライトチケットを持っているので今回ばかりは急ピッチで観光です。


シュノーケリングから帰ってすぐ、カメの産卵を見に行くツアーを申し込むと


簡単レシピのリッゾトを食べ、約束の時間にツアーオフィス前でガイドさんを待ちます。


しかし、5分待っても来ず、10分待っても来ず・・・。


「 まさか・・・? 」


と頭の片隅をよぎりながらも、地元の人が心配して声を掛けてくれるので


会話を楽しみながら1時間その場で待ったのです。


がー!


来ない・・・。


待てど暮らせど来ない・・・。


「 帰って飲もうじゃないか、飲むしかないじゃないか。」


と、パートナーと慰めあいながら30円のビールを買ってその日は宿に帰ったのでした。




翌日気を取り直して、他のツアー会社を探しがてら街を散策です。


ここは小さな島。


街の端から端まではゆっくり歩いても1時間で往復出来てしまうので


半日もこの島にいれば、顔馴染みも出来てしまいます。


昨日のガイドさん待ちをしている時に仲良くなった地元の人が


タクシーの手配をして行った方が安いよ、ということだったので


ちょっとの不安を覚えながらも信用してお願いすることにしたのです。




そして約束の時間、夜8時。


心配していたタクシー運転手もしっかり時間通りに迎えに来てくれたので


安心してカメの産卵が見れるビーチに向かいます。


途中、あまりにも波の高いビーチとビーチ沿いの家が近過ぎて


その家のことを心配に思いながらも、凸凹道をハイスピードで飛ばし30分ほどで到着。


現地で待っていたガイドさんに私たちを紹介すると、ドライバーの彼は帰って行きました。




そこにはすでに他のグループがある箱の中をもの珍しそうに


そして楽しそうに覗いています。


「 ほら!手のひらを広げて!」


と言われるがままに手を広げると、手のひらに何か生き物を乗せられました。


すごくビックリして、怖い!怖い!!とパートナーにバトンタッチ。


ヘッドライトは禁止されているので何がなんだか分からなかったのですが


なんと、生まれて間もないカメの子供だったのです。


果たして触っていいものなの?


これはいいことなの?


それが分からず、触ることを拒否していたのですが


公式のガイドさんが「 OK 」と言うので、再び手のひらにカメの子供を乗せました。


私の手のひらサイズの子供は、まるで海を目指しているかのように


小さな手でしっかり歩もうとするので、落とさないようにするので一生懸命でした。




ガイドさんにこのツアーの説明を受けると、早速出発です。


この時、時間はすでに9時。


向かう先は・・・ありません。


そこに生息している動物ではないので、ただ、ひたすら、何のあてもなく


夜の砂浜を歩くだけです。


何の手がかりもなく、ずっと、ずっと。


それでも、幼い頃から夢見たカメの産卵ともなると


砂に足を取られ歩きにくいはずなのに、足取りが重くならない。


じっとりかく汗も、不快に感じない。


何もない海から母カメが陸に上がってくる姿を想像すると


私の足は、前へ、前へと進みます。


相変わらず高い波にビクビクしながらも、期待で胸が膨らむばかり。


いつの間にか時計は12時。


気付いたら3時間も何もない砂浜を歩いていました。


ガイドさんは、もう折り返そうと言います。


今の今まで


「 まさか、見れない・・・? 」


なんてこと、頭によぎることなんてなかったのに


この時初めてそんな不安が頭をかすりました。


しかし、もう3時間歩いてしまった距離はまた歩いて戻るしかありません。


「 まさか、見れない・・・? 」


不安を波の音でかき消して、また、ただただ月明かりもない新月の砂浜を歩きます。


期待や楽しみが薄れると、ドッと疲れも出てきて時々休むようになりました。


すると、2人の職員らしき人たちが草むらで何かをしています。


ガイドに呼ばれるがままに近づくと、なんとカメの玉子!


どうやら、さっきここでカメが産卵した玉子を保護目的で職員が別の場所に移すらしいのです。


こういう活動をしているので、最初、生まれたばかりのカメの子供を触ることが


出来たのですね。


その活動を一通り見学し、また元の場所目指し歩きます。


30分ほど歩き、もう出発地点だ、という場所でガイドが


「 静かに 」とサインをして私たちを呼んでいます。


近寄ってみると・・・




やっといたんです。


母カメが。




砂浜からだいぶ奥に入った、背丈ほどの木が生える下で


1m位のカメがこれから産卵をするために準備をしています。


産む場所を定めた母カメは、後ろ足でゆっくり、でもしっかり


玉子を産み落とす穴を掘っています。


その穴は意外に深く、脇までの深さがあるようです。


息すらしていけないような緊張感でその姿をしばらく眺めていると


穴を掘るのを止め、玉子の一つ目を産み落とす瞬間のそのほんの一瞬の間に


さきほどの職員が穴にビニールを設置しました。




なんだか、ドキリとして、なんだか、とても悲しい気分になりました。




保護目的だって分かってる。


それがいいことだって思いたい。


でも、荒い波を越え、やっとここまで玉子を産みに来て穴を掘ったのに


産むのはビニールの中。


なんだか・・・何とも言えない気持ちで胸が苦しくなりました。


そんな気持ちとは裏腹に、一度産卵体制に入った母カメはゆっくりゆっくり


玉子を産み続けます。


あのカラダの中にこんなに玉子が入っていたの!?と驚く位


たくさんの玉子を産みます。


15分ほどかけて産んだ玉子の数は120個ほど。


産卵を終えるとビニール袋を手早く回収して、職員が数をカウント、記録をします。


母カメはそこに玉子があると思っているので、




丁寧に


丁寧に




自分が玉子を産んだ穴に土をかぶせます。




ゆっくりだけど、確実に。




丁寧に


丁寧に




それはまるで、お母さんがおにぎりを作ってるかのように


愛情に溢れ、優しさに満ちていました。


最後は、ポンポンと土をならすと、母カメはまた海に向かいます。


その隙に母カメの体長など、職員が詳しく観察してメモを取ります。




ゆっくりゆっくり海の方向にカラダを向け、


ゆっくりゆっくり歩み始める母カメ。


ゆっくりゆっくり、一歩づつ一歩づつ海に向かい


ゆっくりゆっくり、荒い波に近づく。


彼女に大きな波がかぶったのですが、一つ目の波には飲まれず


波が去った時にはまだ彼女の姿が。


そしてすぐまた次の波が彼女にかぶり、波が去ると








そこには、もう誰もいなかった。








一つの大きな仕事を終え、また、帰っていった。








この時、はじめて、涙が出てきた。


産んでる姿よりも、何よりも、これが彼女の生きる姿だと実感して


涙が止まらなくなった。






職員が保護しなければならない現実。


保護しなければ残らない現実。


それは、犬が掘り返すこともあるそうだけれども


人間が高値で売るために掘り返すこともあるので保護するのだそうです。


子供を身篭り、必死に浜に着き、やっとの思いで穴を掘り玉子を産む。


カメに感情があるのか分からないけど、きっと思ってるはず。




「 元気に育つのよ。海で待ってるからね。」




って。




それを、その玉子を人間の手で守らなければならない。


何が正しいのか分からないけど、自分がどうしたいのかも分からないけど


とにかく、なんだかモヤモヤした。


消化不良の感情に、混乱した。




こうして、私の幼い頃からの夢は叶ったのですが・・・。


感動した!と言えば、もちろんそうです。


でも、感動した!とハッキリ言えるような感情にはなりませんでした。


何が正しいのか分からないけど、これが現実だったのです・・・。


そもそも、こうやって人間が自然の姿を見ようとすることすら


間違えなのかも?


答えのないグルグルも、受け止めなければいけない課題だと思って


カメのようにゆっくりでも進んでいこうと思ったのでした。


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